知識と経験の蓄積があるから、歳を重ねるほどにいい仕事ができる。放送作家・石田章洋さんインタビュー<後編>

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石田章洋(いしだ・あきひろ)さん プロフィール
放送作家。日本脚本家連盟員・日本放送協会会員。1963年12月生まれ、岡山県出身。
プランナー&ライターズオフィス、株式会社フォーチュンソワーズ代表取締役。
日本大学在学中に三遊亭円楽(当時は楽太郎)に弟子入り。落語家になるも数年後、放送作家に転身。以来、25年以上にわたり、各キー局のバラエティ番組・情報番組・クイズ番組・報道番組など、あらゆるジャンルのテレビ番組で企画・構成を担当。
手がけた番組の合計視聴率は5万%を超える。
最近の主な担当番組は『世界ふしぎ発見!』(TBS)『TVチャンピオン』(テレビ東京)『情報プレゼンターとくダネ!』(フジテレビ)『BSフジLIVEプライムニュース』(BSフジ)など。
特に、構成を手がけた「世界ふしぎ発見!〜エディ・タウンゼント 青コーナーの履歴書」は第45回コロンバス国際フィルム&ビデオ・フェスティバルで優秀作品賞を受賞するなど番組の企画・構成に関して高い評価を受けている。
著書に『スーパー速書きメソッド』(マイナビ新書)など。

「中身が詰まっている」「値段の価値がある」「愛がある」の3条件を満たす書籍に

「中身が詰まっている」「値段の価値がある」「愛がある」の3条件を満たす書籍に

――『インクルージョン思考』と『一瞬で心をつかむ文章術』は、どのような経緯で出版されたのですか?

石田 以前出版した『企画は、ひと言。』を読んでくださった2つの出版社の方から、それぞれ「アイディアの本を」「文章の書き方の本を」とオファーをいただきました。私の中には①中身がつまっている、②1500円(前後)払う価値がある、③愛がある、という「ビジネス書の3条件」があるんです。3条件を満たし、かつ自分の名前で書いた本がつまらないものにならないよう、いろいろ考えましたね。

――ご自身でコンセプトも考えられたのですか?

石田 そうですね。本にも書いたとおり、僕はアイディアを出すときに「目的を決める→材料を集める→材料をつなぐ→いったんそれらを手放して、ひらめきが訪れるのを待つ」というステップを踏むんですが、特に最初の「目的を決める」が大事。利他的でポジティブで、高次元な目的を設定するようにしています。『インクルージョン思考』を書くにあたっては、目的を「アイディアで日本を元気にする」にしました。アベノミクスのトリクルダウンを待っていてもいつになるかわからないけれど、一人ひとりがアイディアでイノベーションを起こしたら、絶対に日本は元気になると思って。

――タイトルの「インクルージョン」とは「包括」などの意味ですが、「わかりづらいかな?」とは思われませんでしたか?

石田 最初は仮タイトルを「ビッグアイディア」にしていたんですけど、なんか昭和っぽいなと(笑)。さらに、「アイディア」「企画」という言葉を使ってしまうと――『企画は、ひと言。』もそうだったんですが、クリエイター向けの印象が強くなって、それ以外の人に手にしてもらえないんですよね。さまざまな人に「アイディアでイノベーション起こしてほしい」という思いがあったので、「インクルージョン……聞いたことあるな?」とひっかかりを感じて手にしてもらえる可能性のほうに賭けました。

――『一瞬で心をつかむ文章術』についてはいかがですか?

石田 僕は文法的なノウハウを教えられる立場ではないので、「心をつかむ」がカギですね。テレビの原稿を書くときには常に「いかに視聴者の心をつかむか」に心を砕いているので、そういう面であれば読者の役に立てるかなと。プレゼンの資料や企画書、ブログやメルマガなどの作成で使っていただければ。

「使えた」と言ってもらえたらガッツポーズ!

――スムーズに執筆できましたか?

石田 そうですね、それぞれ1ヵ月ぐらいで書き上げました。『頭のいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』の著書の高橋政さんが言うには、「情報を詰め込めば本からオーラが出てくるので、販促などをしなくても書店でお客さんが手に取ってくれる」と(笑)。なので、最初にたくさん書いて、それを半分に縮めました。ちなみに高橋さんは、最初に予定量の10倍の原稿を書いて、それを10分に1にするそうですよ。

――読者の反応も楽しみですね。

石田 そうですね、どんな意見でも読者からの反応があるのはうれしいことです。仕事関係や身近な人に「いい本だったよ」と言われても、なかなか額面どおりには受け取れないですから(笑)。でも、書いたからにはやっぱり「役に立った」と思ってもらいたい。「アイディアがひらめいた」「いい文章が書けた」と言ってもらえたらガッツポーズです。

知識と経験の蓄積があるから、歳を重ねるほどにいい仕事ができる

知識と経験の蓄積があるから、歳を重ねるほどにいい仕事ができる

――「仕事のヒントにしたい」「もっと仕事で頑張りたい」と思う方が手に取ることが多いと思いますが、どんな仕事にも通じる普遍的なアドバイスはありますか?

石田 本を読むこと。これは本当に大事ですね。ネットや図書館で借りた本など、タダで得た情報は潜在意識まで染み込まないですから、自分のお金で本を買って読むこと。お金を払った情報は身になります。そうして身に付いた知識は、失われることのない財産ですからね。ビジネスや人生で、大きな武器になりますよ。あとは、前回も言った「利他」の精神を大事にすることだと思います。

――前回おっしゃっていた「100冊の企画の本」も自腹で買われたんですか?

石田 もちろんです、貯金を切り崩してね。情報はどんどんインプットしていかないと。こういう仕事をしていると「歳をとると、発想やひらめきが鈍ってダメだね」という人もいるそうですが、僕は逆ですね。これまで潜在意識に溜まってきた情報が発酵されて、むしろひらめくようになってきている。今回の本だって、50代の今だからこそ、きちんとかたちになったと思うんです。なにも僕みたいな仕事だけじゃなく、ほとんどの仕事に通じることだと思いますよ。積み重ねた経験と取り入れ続けた知識が、歳とともにうまく混ざり合って、いい仕事につながるんじゃないかなと。

――なるほど、石田さんのこれからの仕事が楽しみです。今後、書きたいテーマはありますか?

石田 次は「笑い」で決まっています。街を歩いている人たちみんな、眉間にシワを寄せていますよね。そのシワを取って、社会に笑顔を増やしたい。ただ、笑いを単純に言語化すると、さむくなってしまう(笑)。『ユーモア話術』みたいな本をおじさんが書いても、読まないでしょ(笑)? 心がほっこりと軽くなるような話の伝え方を、うまく言葉にできたらと考えています。

【取材後記】
アロハシャツでフラッと(いい意味で!)現れ、飄々と、かつ的確に簡潔にお話ししてくださった石田さん。苦労を苦労と感じさせないその口調に、石田さんのフットワークの軽さと強さを感じました。個人的には、「歳を重ねるほどにいい仕事ができる」という言葉に勇気をもらいました。

文:細井秀美